代表的なこころの病気について
うつ病
うつ病はよくみられる病気で、100人に3~7人という割合でうつ病を経験した人がいるという調査結果があります。気分が落ち込んだり、何をしても興味がわかないような状態が続き、日常生活に支障をきたすほど悪化した場合に診断されます。眠れない、食欲がない、頭痛が続くなど身体症状が目立つことがあります。また、再発しやすい病気の一つです。回復には、まず十分な休養を取ることが必要で、治療としては、薬物療法(抗うつ薬が中心)、精神療法(認知行動療法的アプローチなど)が行われます。悲観的な考えに陥りやすく、希望が見えない感覚にとらわれることがありますが、「やまない嵐はない」(どんなにつらいことでもそれが永遠に続くことはない)と信じて治療を続けましょう。
双極性障害(躁うつ病)
気分が高揚する「躁状態」と前述のうつ病でみられるような「うつ状態」を繰り返す病気です。気分の変動は数週から数か月続くことがあります。躁とうつが混合しているような状態のときもあります。躁状態では、気分が高ぶり、次々と考えが浮かんで、どんどん行動してしまう一方で、注意が散漫となって集中できず、怒りっぽさが目立つことがあります。また、お金を使いすぎたり、異性関係が激しくなったりして、対人関係や社会生活に深刻な影響を与えることがあります。入院を要するほどではない場合は、軽躁状態と呼ばれます。躁状態では、ご本人が病状とは思っていないことが多く、周囲から指摘されてようやく受診されることがあります。治療は、気分安定薬などを使用する薬物療法が行われます。また、自分の病気を知り、生活習慣を見直したり、気分の変化に早めに気づいて対処するための支援を行います。
統合失調症
脳の情報処理がうまくいかず、思考が混線しやすくなる病気です。脳の一部の働きが過敏になったり、不安定になるため、精神症状が現れます。100から120人に1人ぐらいが一生のうちにかかるといわれています。代表的な症状としては、自分が嫌がらせをされているとか狙われているとか、現実にはないことを信じ込んでしまう「妄想」や、実際にないものを知覚してしまう「幻覚」(統合失調症では、自分のことを噂していたり、行動を指図するような幻聴が多いとされています。)があります。また、考えや会話のまとまりが悪くなって他人が聞いても分かりにくくなったり、行動も混乱したりすることがあります。一方、感情の起伏が乏しくなる、周囲への関心が乏しくなる、身の回りのこともあまりしなくなるなど、生き生きとした感じが失われ元気がないようにみえる「陰性症状」が現れることがあります。症状がよくなっても再発しやすい病気なので注意が必要です。お薬は、症状をよくするだけではなく、再発をしにくくする効果があります。また、病気や治療に関する知識を身につけ、対処方法を学んだり、いろいろな活動を通してリハビリテーションを行うことも重要です。病気があってもうまく付き合いながら、自分らしく生きていくことを目指します。
パニック障害/パニック症
予期せず突然不安が強まり、激しい動悸やめまい、息苦しさ、ふるえ、発汗などの症状が現れ、そのために「死んでしまうのではないか」と思うほどの恐怖に襲われるのが典型的な「パニック発作」です。発作を繰り返すと、逃げ場のない恐怖感や、また発作が起きるのではないかとの不安から、発作を起こした乗り物や場面を避けるようになり、日常生活に支障をきたすようになります。治療については、薬物療法と精神療法(認知行動療法など)を併用すると治療効果が高いとされています。
社交不安障害/社交不安症
他人に悪い評価を受けることや人前で注目を浴びることに対する不安・恐怖が強くなり、そういった場面でふるえやめまい、吐き気、息苦しさなどの症状がでる、苦手な場面を避けるなど社会生活に支障をきたしたときに診断されます。治療としては、薬物療法も行われますが、認知行動療法や森田療法など精神療法が有効とされています。
発達障害
発達障害は、脳機能の発達が関係する障害です。発達障害があると、例えば、円滑にコミュニケーションをとったり、場の空気や他者の気持ちを読む、ミスや漏れなく作業をする、などにむずかしさを感じることがあります。周囲からは、「自分勝手」「変わった人」と思われたり、「努力が足りない」「怠けている」と勘違いされやすい面があります。そのため、集団で孤立してしまったり、繰り返し怒られたりするため、自信が持てず、自己評価が低くなりがちで、不安症やうつ状態になってしまう方もいます。ここでは、発達障害の中で代表的な、ASD(自閉症スペクトラム障害、スぺトラムは連続体という意味です。広汎性発達障害とほぼ同義で、アスペルガー症候群が含まれます。)とADHD(注意欠如多動性障害)について触れておきます。
ASD(自閉症スペクトラム障害)は、空気を読むのが苦手、相手の気持ち・あいまいな表現を理解することが難しい、興味の範囲が狭く、こだわりが強い、などの特性があり、主に対人関係で苦労しやすいタイプです。逆にいうと、明確な言い方や決まったパターンに安心感を持ちやすかったり、論理的で、深くつきつめていくことは得意といえるでしょう。
ADHD(注意欠如多動性障害)は、脳のエネルギーのコントロールが苦手なため、熱しやすく飽きやすい、他の刺激が入るとそっちに気を取られてしまう、ケアレスミスが多い、落ち着きがない、複数のことを同時にするマルチタスクが苦手、後先考えず行動や決断をしてしまう、といった特性がみられます。逆に、活動的、行動的なのが、プラスに働くこともあります。
発達障害は、定型発達との境目があいまいであり、特性も当てはまっているところとそうでないところがあったり、濃淡があることが多いです。ただ、何かしらの生きづらさを感じている方は、専門家に相談してみるのもひとつです。それをきっかけに自己理解が深まったり、長所は活かし、苦手なところをカバーするヒントをもらえるかもしれません。また、ADHDには治療薬もあります。
認知症
何らかの理由で脳の細胞が過剰に減ってしまったり、うまく働かなくなってしまったことが原因で発症します。認知症にもいろいろなタイプがありますが、一番多いのはアルツハイマー型認知症です。最初は物忘れが目立つようになり、徐々にそれまでできていたことがうまくできなくなることで気付かれます。不安や抑うつ、怒りっぽさや被害妄想などが全面に出てくることがあります。異変に気づいたら、早めに地域の相談窓口に行ったり、医療機関に受診されることをお勧めします。早期発見・早期対応で、認知症の進行をゆるやかにできたり、ご家族としては介護しやすくなることにつながります。
リンク集
- こころの健康や病気、支援やサービスに関する情報
- 厚生労働省(知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス)
- 公益社団法人 日本精神神経学会(一般の方へ)
- 精神障害のある方への援助・サービスについての情報
- 東京都立中部総合精神保健福祉センター
- 世田谷区